EmoFreak’s blog

限界オタクが韓国ミュージカルを観て感じたことを忘れないように書き留めていくブログです。

【観劇覚書】2018.10.13&16 SMOKE【木暮超・高垣紅/日野超・池田紅】

●10/13(土) 14時公演
超(チョ):木暮真一郎
海(ヘ):大山真志
紅(ホン):高垣彩陽
Eブロック2列目

 

●10/16(火) 14時公演
超(チョ):日野真一郎
海(ヘ):大山真志
紅(ホン):池田有希子
Sブロック2列目

 

2回目と3回目!2回目は初回とWキャスト逆、3回目は初回と同じキャストで。
伏線を拾いつつ、キャスト比較しつつ……と脳フル回転で挑むので毎回めちゃくちゃ疲れます。観客のエネルギーも容赦なくごりごり削ってくる。それだけの熱量をもった作品だということなんですけれど!
Wキャスト両方とも見て、3回とも全部違うエリアから観ることができました。
というわけで、今回はキャストごとの感想を。
途中途中曲名でシーンを示しているのですが、韓国版のタイトルをなんとなくで訳しているだけなので色々間違っているかもしれません。こうめいさんが訳されたタイトルを知りたい……パンフに書いてなかったの結構切なかったです。これはCD出していただいて、そこで明かしていただくしかないやつ←
そして今回からは完全にネタバレ全開でいきますので、回避したい方は読まないでくださいね!

 

 

日野超

LE VELVETSの存在はう~っすら耳にしたことはあるものの、きちんと個人として認識して拝見するのは初めてでした。
ものすごく良かった!!!めちゃくちゃ好みです、とくに表情。
とても神経質で常に張り詰めた雰囲気。苛立ちを隠せず、顎を上げて世界を見下ろそうとする。海を睨むときの目線は冷たく疲れきっていて、限界が近いのだということをひしひしと感じさせます。
♪最後のチケット の、低く静かに言い聞かせるような歌声がすごく好きです。ワンフレーズで海を支配せんとする響き、すごく色っぽいしめちゃくちゃかっこいい。"超越した理想の姿"で在ろうとする超の魅力がたっぷり詰まっている。
終盤、紅に抱き締められたとき、苦しそうに、そしてどこか悔しそうに目を伏せ、おそるおそる背中に手を回したのがとても印象的でした。マイ初日の9日はこのときの表情がとてもよく見える席に座っていたので、本当に運がよかったなと……張り詰めた糸がゆっくり解かれるように、超が解放された瞬間でした。
♪翼 で、「青だろうか。それとも、漆黒の闇だろうか」と問いかけるときには、しゃんと格好よく立ちながらも、そこに焦燥や不安、恐れはなく、ただまっすぐに海を見て問いかけます。そして、「きっと一つくらいは天空に届くかもしれない」と海が呟いた言葉を噛みしめるように小さく頷き、息を吐くんです……このときの横顔にもうぼろっぼろに泣かされました。ずるい。
きっとこの姿が、李箱が求めた本来の理想の姿、「超」なのではないかなと。自信に満ちた微笑みを湛え、堂々とした姿。そんな超と対等に言葉を交わす大山海もまた、本来の「李箱=金海卿」に戻っていて。その二人の間を紅が駆け巡る、という美しさ。
16日マチネでは、♪翼 の曲中はもう涙が止まらなくて、でも口元は自然と笑みの形になっているし温かい感情が胸いっぱいに広がるしで、わけがわからない状態になってました。対面のお客様に申し訳ないくらい変な顔してたと思う。これが対面じゃなきゃ思いっきり笑い泣きするんですけれど、さすがに顔ぐっちゃぐちゃに歪めるわけにはいかなくて必死に耐えました……苦しかったwww

 

木暮超

日野超がぴんと張り詰めた焦燥だとしたら、木暮超は底無しの闇に少しずつ沈んでいく苦しみ。木暮超のほうがどろっとしています。
序盤、日野超はあくまでも苦悩をひた隠しにしていようとするのに対して、木暮超は苦しみや憎しみや恐怖をそのまま全て怒りや圧力に変換してぶつけている感じ。そういうどろどろした感情がこれでもかと込められた鋭い眼光。でも、その圧力の根幹が弱さの裏返しであることはひしひしと伝わってきます。
ふつふつと煮えたつ怒りを体当たりでぶつけるので、日野超よりも熱い感じ。戻ってきてからの「大丈夫か、紅?」のニュアンスが全然違うんですね。日野超は紅を気遣う海への苛立ち、木暮超は苦しそうに咳き込む紅(=自身の写し身)への嘲り(嫌悪)、という感じ。
そして、木暮超はとにかく紅に抱き締められてからの変化が顕著。13日のこのシーン、木暮超は背中しか見えなかったのですが、すがるように衝動的に強く紅を掻き抱いたんですね。日野超とは対照的な抱き締め方。こういうのがあるからWキャストは沼なのです……
木暮超は、きっと最初からすがれるものを探していて、何よりも紅が象徴する愛や憎しみや思い出や生そのものが詩人・李箱に必要不可欠であることはわかっていたんじゃないかなと。木暮超が紅を拒む強さは紅を求める強さの裏返しみたいに思えます。そして、紅をしっかりと受け入れた後は憑き物が落ちたみたいに穏やかな顔になるんです。
日野超はあくまでも最初から最後まで「超」で、♪翼 でも自信に満ちた理想的な姿を保つのですが、木暮超はこのシーンから「超」ではなく「李箱=金海卿」になったような感じがしました。大山海もこの少し前から「李箱=金海卿」に戻っているので、超も海も紅も一人の人間の一部である、ということの強調になっていた気がします。
なんだかこうして考えているうちにどんどん深みにはまっていくので恐ろしいですね、木暮超……次に見るときにまたどう変化しているか楽しみです。

 

大山海

大山さんとの出会いはもう6年?ぐらい前になります。大江戸鍋の源五右衛門。なっつかし!!!
一推しとして追いかけていたときもあったのですが、気づけば2年ぐらいご無沙汰になってしまっていました。舞台自体をほとんど見なくなっていたので、あえて避けていたというわけではないんですけれども。
今回、このキャスト欄に大山さんの名前がなければチケットを買っていたかどうか……結果的にこうして素晴らしい作品に出会えたので、推していてよかったなあと。
そもそも私がミュージカルを見るようになったきっかけは大山さんなのです。それを話し始めると長くなってしまうので割愛しますが(笑)大山さんは他にもいろいろと私にいいきっかけをくださっていて、きっとそういう縁なのだな~と思います。これからも大切にしていきたい。
まあそんなわけで久々に見た彼ですが、私の観測史上最大サイズになっていてちょっと笑いました。マシューやる頃にはもう少し絞っておいてくださることを願っています……(笑)

閑話休題

やっぱり私はこの方の声が好きなんだな~と再確認しました。どう表現したらいいのかわからないですけれど、大山さんの歌声の響き方がすごい好きなんですよね……
歌も芝居も毎回きちんと合格点出してくださることがわかっているので、ある程度安心して観に行けるのもいいところです。
大山さんにしては珍しい純粋な少年のような役。ペンギンみたいにぺたぺた歩きするショタ(29)。14歳にしてはちょっと幼すぎる気はするのですが、終盤との落差・対比を考えるとそういう作りになるよね~という感じ。
韓国のプレスコ映像見ると、海は「少年」って言葉が似合うような少し幼い雰囲気の若い役者さんが演じているので、あちらで既に見ていた方々にはどう映ったのだろうと気になるところです。といっても大山さんも一応二十代なので十分若いんですけど……ってここまで書いてドンソクさんより年下ってことに今気付いた。なんてこった。
目覚めたとき、そして鏡を見たとき、と二段階に変化する姿はさすが。大山さんの場合、超の正体を知ったときに本来の"27歳の金海卿"に戻った、と受け取れるので、前半の幼さへの違和感は逆にいい味になっている気がします。
♪煙のようにrep. で鏡を見て、超に押し付けた自らの弱さ、鋭さ、怒り、絶望……それらが自分の中にあったものだと気づいたとき、目の色がはっきりと変わるのがとても鮮烈です。このときの表情、E・Sブロックからしか見えないのがもったいないですね……四方囲み席ならではの悩み。
そしてもう一つ、これは13日の席の恩恵なのですが、釈放されて牢を出るときに、扉から差した光を見上げて泣きそうな顔をしたのをほぼ真正面で見ることができました。9日は背中しか見えなかったので、ああこんな顔をしていたのか……と納得、胸にこみ上げるものがありました。ここの光の表現は、暗闇の中の光、を表しているのかな。
なによりも、♪墜落する全てのものには翼がある→♪絶望→♪翼 と、終盤一曲ごとにそれぞれ違う声色を堪能できるのが本当に贅沢!「こんな大山真志が観たい」というあらゆる欲求を満たしてくれます。
この役、推しにやってほしいって思う人たくさんいるだろうなあ……一粒で二度おいしいどころか三度も四度もおいしいですもん。再演があったときには海もダブルかトリプルで観たいですね。
大山海は、まだまだもっと変化していくのでは?と思っています。既にここまで見ただけでも、9日よりも13日、13日よりも16日、とどんどんよくなっている。
公演終盤、体力も精神力もすり減ってきた頃にさらにもう一つ壁を破ってくださることを期待しています。無理矢理予定を調整して最終週行けるようにしたので、今から楽しみです。ハードルは積極的に上げていくスタイル。
こういう剥き出しの感情や人の内面が深く描かれる作品は、日本でミュージカルをメインに活動しているとなかなか出会えないはず(そういう作品が次から次へと生まれる大学路はどんな魔境なんだ……)。
パンフでもご本人が「ターニングポイントになる作品」と書かれていましたし、三十路を前にさらなる飛躍のきっかけになればいいなと願うばかりです。

 

池田紅

池田紅、9日に見たときと16日に見たときではぜんっぜん印象が違って。初見と2回目って違いももちろんあるとは思うのですが、それだけではないような気がしました。
池田紅は、♪煙のように で超の書いた詩について話し、「でも、もう詩は書かない!って」と海が言ったとき、明らかに傷ついたように目を伏せ、海に背を向けるんですね。これはほんの一例なのですけれど、こういう細かい伏線が数えきれないくらいに散りばめられているのだろうと思うとチケット増やさずにいられないという……
「恋をしたことはある?」のところですが、9日に見たときは年の離れたお姉さんのようで、♪綺麗な人、綺麗なあなた の曲終盤でようやく恋=錦紅の影を纏う、という感じでした。ただ、16日に見たときはこのシーンの序盤から少女の影が見えたんですよね。日を重ねるごとにニュアンスも少しずつ変わっている……沼…………
「お願いよ 行かないで 捨てないで!」と叫ぶように歌う姿はまさに感情の奔流そのもの。超と海、鏡合わせの二人をときに優しく包み込み、ときに激しくかき乱す。金海卿という人間は紅の存在によって生かされているのだということを強く訴えかけてきます。
超や海の苦しみに感情移入していると、「生きて」「書いて」と強引に筆を握らせようとする言葉はときに耳障りに聞こえます。もう楽にしてあげて、と観客にすら思わせる、それだけの強さがある。
でも彼女の言葉や涙、微笑みによって、海と超が頭につきつけた銃を下ろしたとき、観客の心も一緒に解かれるんです。あの狭い空間で彼らの世界にいつの間にか没入させられている、その原動力が池田紅にある、ということにあの瞬間気づきました。
母、姉、恋、思い出や苦痛や才能、海、そして生そのものであり、死そのものでもある「紅」
池田紅の根幹は、幼い頃に離れなければならなかった母なのだと思います。
李箱の、金海卿の苦悩の始まり。母の形をとった「紅」。男の子と袋の話を語り聞かせるときの姿はまさに子供に絵本を読み聞かせる母のよう。
「母なる海」という言葉が一番合うのかもしれません。韓国語で同じような表現があるのかはわかりませんが、この作品にはすごく親和性の高い言葉ですよね。♪海 で「限りない命が生まれて ほら 息づいてる」というような歌詞があったと思うのですが、このあたりにも母なる海という言葉が隠されているような感じがします。

 

高垣紅

まず、あのあやひーをこんな距離で!?うわっ本物だ!!!っていうのが最初に来ました(笑)2010年代のアニメをリアルタイムで追ってきたオタクなので。お声や歌は数えきれないくらい聴いてきたけれど、生で拝見するのは初めて。初めてがこの作品ってのがすごいなと思うのですけれど。
声の演技はもちろんのこと、表情、とくに目の芝居がすごく細かく鮮烈でした。ぱっと華やいだり、探るように上目遣いしたり、静かに伏せられたりととても鮮やかで。なかでも特に微笑みが強く印象に残っています。
高垣紅は、錦紅の形をとった「紅」なのだと思います。錦紅の「紅」⇔金海卿の「海」、という繋がりがあることを知ったのは13日の開演前にパンフを読んでからなので、タイミングの関係もあってそれを強く感じたのかもしれませんが。噛み傷の手当てをしているときの視線の交わり方も、♪綺麗な人、綺麗なあなた 周辺のやりとりにも、明確に惹かれ合う男女の恋の色が見えました。
池田紅が圧倒的な熱量で超と海に対峙するのに対して、高垣紅は凛とした言葉と纏った空気で対峙する感じ。紅自身も彼らに拒絶されないよう必死に食らいついている、というような。
「お願いよ 行かないで 捨てないで」のところも、懇願するように歌う高垣紅。池田紅のように力で圧倒するような感じではなく、紅は紅で苦しみもがいて、それでも必死に両脚に力を入れて立っている、その魂の叫びという感じ。紅が消えてしまったらその時点で海も超も崩れてしまう。だからこそ、私は絶対に消えない!という強い決意が見えます。
紅は海の象徴でもあるので、その海を「死に場所」と決めてしまったら、紅は単なる「死」になってしまうのですよね。それはつまり紅という存在そのものの死でもある。だから紅は必死に海と超を生かそうとする。紅のことを考え始めると、考え得ることが多すぎて時間が足りなくなります。
池田紅の場合、海と超の鏡合わせの関係がまずあって、その彼らを覆うように紅が在る、というイメージなのですが、高垣紅の場合は海、超、紅が三角形にそれぞれ繋がり合っているようなイメージです。なんか概念的な話になってきちゃいましたね。
超のお二人はそこまで大きな違いはない印象なのですが、紅に関してはかなり違うので、作品そのものの空気感もだいぶ変わります。紅が象徴するものの範囲が広いので、解釈や演じ方によってどんなものにでもなれることがより沼を深めている感……

 

 

なんだか全然まとまりませんでしたね(笑)
本当に隅から隅まで緻密に練られた素晴らしい作品で、キャストごとの味もあり、何回見ても飽きることなく噛みしめられる舞台だということが改めてよくわかりました。
結局また増やしてあと2回見る予定なのですが(当初は2回で終わりにするはずだった)、それでも全然足りない……あと切実に台本がほしいです。文字からしっかり読み解きたい。
韓国では台本売ってたそうですね!!!いいな……欲しかったな……
韓国でまた再演されたときには思う存分に通いたいと思います。また通いたい作品が増えてしまった。

そんなわけでなんとかキャスト感想まとめきったので、明日からまた生命創造に戻ろうと思います!
一ヶ月半ぶりのフランケン渡韓。楽しみすぎて寝れない!!!
ちなみに荷造りはまだです。ソウル公演のレポもまとまっていません。いつになったら終わるんだろう……がんばります。