EmoFreak’s blog

限界オタクが韓国ミュージカルを観て感じたことを忘れないように書き留めていくブログです。

あこグリンアワード2019【後編】

あこグリンアワード後編です!また更新が止まってた!もう時期とか気にしないことにします。
今回は特別賞(ただ取り上げたいものを詰め込んだだけともいう)編。

前篇はこちら▼

emofreak.hatenablog.com

●対象作品

2019年1月~12月に韓国で観たミュージカル全て

·ストーリーオブマイライフ(스토리 오브 마이라이프)
·もしかしたらハッピーエンディング(어쩌면 해피엔딩)
·ランボー(랭보)初演・再演
·風月主(풍월주)
·エリザベート(엘리자벳)
·ジキル&ハイド(지킬앤하이드)
·あしながおじさん(키다리아저씨)
·月と6ペンス(달과6펜스)
·キングアーサー(킹아더)
·ザ・キャッスル(더캐슬)
·HOPE(호프)
·ザ・フィクション(더픽션)
·ファン・ゴッホとひまわり少年(반고흐와 해바라기 소년)
·狂炎ソナタ(광염소나타)
·ルドウィグ(루드윅)
·ロッキーホラーショー(록키호러쇼)
·ベニスの商人(베니스의 상인)
·死の賛美(사의찬미)
·リトルジャック(리틀잭)
·蘭雪(난설)
·ヘドウィグ(헤드윅)
·ベンハー(벤허)
·このように普通の(이토록 보통의)
·海賊(해적)
·팬레터(ファンレター)
·정글라이프(ジャングルライフ)

 

【番外編:特別部門】

劇場賞

大学路TOM1館

けっこう真面目に考えました。

韓国の劇場は基本的にどこも見やすくていいなと思っています。その中でもTOM1館の視野はとくにすごいなと。

前方から最後列まで割とまんべんなく座りましたが、どこに座っても前の列の人の頭が舞台に被らないんです。最前エリアの両サイド端とかでなければ、基本舞台上が見切れることはないんじゃないかな?このシーン好きなのに見辛いㅠㅠㅠという悲しい思いをしなくていいってめちゃくちゃ幸せなことです。

その代わり、入場即断崖絶壁階段なのは何度通っても怖いですが……(笑)あとトイレがあまりにも少ないのはどうにかしてもらいたいですね。2つて。

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ベストケミ賞

「死の賛美」
ムンウジン×アンシムドク×ボムサネ

最後の最後までミョンウンを信じて大切にしてくれていたムンウジンとアンシムドク。最終的にウジンシムドクvsサネ、という構造になるのが基本線なこの作品。ジェボムさんが編み出した友情&愛情路線においては、ムンソンさんとユジンさんが相手のときが一番極限まで魅力が引き出されていたように思います。

大切な友人に向けて引き金を引いてしまったことを後悔していたムンウジン。
罪悪感からミョンウンの名前を呼びながら自殺を図ったり、何度も繰り返し握り合った手の感触が忘れられなかったりと、彼にとってのボムサネは単なる恐怖の対象ではなく、確かにとても大切な存在であった、というのが強く伝わってくるウジンでした。
自分を騙していたミョンウンのことを恨みきれないウジン。優しすぎたんですよね、ムンウジンは。だからこそ、どんなにダメ男でもシムドクが好きになったのにすとんと納得がいくんですよね。

アンシムドクも、最後までボムサネを大事に思ってくれていました。
ウジンとの関係においても、アンシムドクは「ウジンが(大切な友人だったはずの)ミョンウンまで疑うほどに狂ってしまった」ことに落胆していたように思います。ウジンが言うミョンウンの真実を信じたくなかったんですよね。ミョンウンは大切な友達だから。
わんびょっかんきょるまるで戯曲の結末を聞き出そうとしたときに、「ただの普遍的なラブストーリーだ」と誤魔化そうとするボムサネに対し、「ミョンウン、"私を見て!"本当にそれだけなの?」と声を震わせながら言った回(10/3夜公演)があって……そうなんです、この回のボムサネ、自分の正体をシムドクに知られることへの恐れなのか、シムドクの言葉を遮るように話し、一度も目を合わせようとしなかったんです。
それに目ざとく気づいたアンシムドクのアドリブが「私を見て!」……思い返すだけで泣けます。わんびょっかんきょるまるであんなに泣くのはたぶんあの回が最初で最後でしょう。
どこかのインタビューでユジンさんが「ボムサネは可哀想な子。わんびょっかんきょるまるで"안녕"を言うときは子犬を置いていくような気持ちになる」というようなことを仰っていたと知りボロボロ泣きました。ボムサネにそんなこと言ってくれるシムドクはアンシムドクしかいない……;;;

そしてボムサネ。
ムンウジン(毎回)とギョンスウジン(3~4回限定?)相手のときだけ現れるウジンとの友情路線。
友情路線の日(確定)orアンシムドク相手のときによく現れるシムドクとの愛情路線。
やっぱり私はクソデカ感情が交差しまくる切ない話が好きなので!サイコパス死神様の回ももちろん好きですが、「あの時は本当に幸せだったのに。私たち三人」という台詞がぐさりと刺さって抜けなくなるような友情路線が一番好きでした。

ジェボムさんの鬼才ぶりを余すところなく堪能できた死の賛美という作品、このタイミングで出会えて本当によかったです。
次のシーズンでもぜひ!ぜひ!!出ていただきたいです。そうなったらもうソウルに住むしかない。ボムサネ貯金しよう。言うだけならタダ。
まだまだ無限に書けそうですがこれくらいにします。詳しくは過去のブログを読んでください(笑)

 

そして、惜しくも受賞は逃しましたが、ベストケミ賞次点はドンファランボー×ボムヴェルレーヌでした!
DVD本当にありがとうございました。家宝にします。

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ベスト回ランキングトップ5

「あの日に見たあの回」として特に印象に残っている公演をピックアップしました。
正直ここに載せる回はどれも甲乙付けがたいのですが、あえて順位を付けます!

が、5公演だけという縛りは無理なので諦めました!(笑)といわけで、5位からカウントダウンしていきます~。

 

5位

●2019.01.05(土) 19:00 @대면문화공장 1관
もしかしたらハッピーエンディング(어쩌면 해피엔딩)
オリバー:김재범
クレア:강혜인
ジェームス:양승리

本陣さまとの出会いの作品。

呼吸困難になるまで泣いた。

この頃は聞き取れる単語なんてせいぜい1場面につき2・3個というレベルだったので、何を言ってるかなんて99%わからなかったんですよ。それでももう序盤から涙腺が緩んで、中盤からずっと涙が止まらず、鼻を啜るまいと息を止めていたら終演後には呼吸困難による頭痛でフラッフラになっていました。
忘れられない出会いになりました。ボムオリバーもヘインクレアもスンリジェームスも皆さん素晴らしかったです。あ~おへぷ観たい!!

●2019.05.05(日) 18:00 @SMTOWN THEATRE
狂炎ソナタ(광염소나타)
J:박한근
S:김지철
K:이선근

運営とSMタウンシアターのマイナス分をふっとばしてランクイン、というだけでどれだけ素晴らしかったかわかっていただけると思います()
この作品、日本公演アイドル回+この日の2回しか見ていないので、大学路でやっていた頃を知っているマニアの方とはぜんぜん違う受け取り方をしているかもなのですけれど。直前まで月と6ペンスにどハマりしていた上、キャストも被っていたので、受け取れる土台ができていたのも大きかったかなと思います。
小劇場作品をやるのにまるで向いてないライビュ用の劇場で、大劇場10列目くらいの距離から観ても感情のぶつかり合いがグサグサ刺さってくる凄まじさ。オリジナルキャストかつ歌に説得力のある方々だからこそ受け取れた感動だったと思います。
いつか小劇場でまた観られたらいいなあ……

●2019.05.15(水) 15:00 @샤롯데씨어터
ジキル&ハイド(지킬앤하이드)
ジキル/ハイド:조승우
ルーシー:해나
エマ:이정화

国民的スター、チョ・スンウ俳優様のジキハイ。
スターがスターたる所以を身をもって理解しました。本当にすごかった。
お芝居の説得力が違うのですよ。もう長くこの役を演じてきていらっしゃるというのがなにより一番なんでしょうけど、他のキャストで観たときとは圧倒的にジキル博士/ハイドの人物の質量が違う。
正直ジキハイという作品自体はまったくといっていいほどハマらなかったんです。グァンホさんやドンソクさんで観たときも、役者としてこの作品を演じるお二人を観たことへの満足感はあっても、作品自体が響くことはなかくて。それがスンウさんで観たとたん、まるでリメイクされた別作品を観ているのか?というくらいに物語がすっと入ってきたんです。お芝居の力というのは本当にすごいですね。

 

4位

●2019.10.03(木) 15:00 @대학로TOM1관
死の賛美(사의찬미)
キムウジン:김경수
ユンシムドク:최연우
サネ:김재범

●2019.10.03(木) 19:00 @대학로TOM1관
死の賛美(사의찬미)
キムウジン:주민진
ユンシムドク:안유진
サネ:김재범

この日の昼夜公演はセットで語りたい!というわけで2回分まとめてランクインです。

まず昼公演。ギリギリまで「ハン・ミョンウン」を演じ続け、二人を掌の上で弄んで楽しむ愉快犯サイコパスボムサネでした。
ボムサネ覚書の記事に少し書いているので、引用しながら書きます。

10/3の昼公演がその方向性の完成形だったのかな?と思っていて。♪俺達の関係はここまでだ でウジンに撃たれるまでは、本気でウジンもシムドクも大切に思っているようにしか見えない演技をしているんです。でもウジンが引き金を引いたのを見て「うじな、どうして俺を……?」と声を震わせた直後、空の銃を奪い返して狂ったように何度も引き金を引きながらカラカラ笑うんですよ。
さらには腰が抜けてへたりこんだウジンを覗き込んで「はは、かわいい^^」と満足そうににたりと笑って去っていく、という。
たぶん一番のホラーです。そりゃ煙草漬け薬漬けにもなるわ……

この「かわいい(日本語)」、もともとは東京賛歌でシムドクがウジンにキスするときの台詞です。
その後ウジンがシムドクにキスし返す時に、ギョンスウジンはこの「かわいい」をお返しみたいにして言ってからキスするんです。ギョンスウジン限定のディテール。
それを利用して、絶望のどん底にいるウジンに向かって「かわいい」を投げかけるボムサネのえげつなさよ……他の日には「うじな~、銃弾がないねぇ?ははは、かわいい♡」ってさらにおちょくったりする回もありました。最っっっ低!!!
ウジンが自分の思い通りに壊れていってくれたのが面白くてしょうがなかったんでしょうね。対照的に完全に魂が抜けて錯乱状態になってしまうギョンスウジンの憐れさがこれまた効くんですよ……ただでさえ気弱で小心者っぽい雰囲気たっぷりなギョンスウジンだからこそ、余計にかわいそうで。

まだまだホラーは続きます。この回の♪完璧な結末 は、完全にシムドクを洗脳せんとする悪魔モード。美しい結末へ向けた最後の仕上げです。(失敗するけど)

さらにこの日、シムドクに対しては完璧に演じきっていたのですが、♪完璧な結末 のラストの「안녕」で化けの皮が剥がれていました。
それまでは心からシムドクを求めて焦がれているような演技をしていたものの、シムドクが銃を受け取ったことでやっと思い通りになる!とニヤけたまま挨拶しそうになっちゃうんですよね。でもそこであ~いけないいけない!今はこういうテンションのシーンじゃないよね!と自分を諌めて、わざわざ切なくて苦しそうな表情を作ってから「안녕」と声を震わせて去っていく。

有無を言わさぬ強い口調でシムドクの心の隙を突き、かと思えば優しい言葉でまやかしの愛情をちらつかせ、ウジンへの想いを折ろうとする。シムドクの目が届く間は「シムドクに想いを寄せる男」の仮面を決して外さないんですが、視界を外れた瞬間に本性が滲み出るのが観客にはよく見えるわけです。シムドク逃げて!!
「誰も私を縛らないところ~この世にはないところ」のデュエットパートで、銃を握らせた右手を掴み、完全に冷え切った表情で耳元に囁きかける、その目つきの恐ろしさ。シムドクでなければあんな洗脳耐えられないですよ普通。

このギリギリまで騙すパターンが初めて爆誕した日、ジェボムさんファン界隈でも「途中まで友情路線だと思って見ていたのに、うかんよで後頭部をぶん殴られた」というようなふぎツイートが溢れ、衝撃が広がっていました。
ちょうどムンボムのペアマク後で、もう友情路線は見られないのか……?と界隈が皆みょんうにに飢えていたタイミングだったので、ファンとしても期待していたんですよね。ぼむうにに会えることを。

きっとジェボムさんも観客の絶望顔を見てご満悦だったことでしょう(白目)

続いて夜公演。昼公演で魂をすっぽり抜かれてしまったので夜公演ちゃんと楽しめるか少し心配だったんですが、杞憂でした。

わんびょっかんきょるまる
명운아! 날 봐, 정말 그거 뿐이야?
自分が描いた結末を語るとき、どうしてもシムドクを正面から見られないボムサネに気づいて、切実に訴えかけるように"날 봐"って😭😭😭アンシムドクは最後までミョンウンを信じてたし、信じたかったんだと思う

— あこ*아코 (@ako308_5) 2019年10月3日

シムドクに本気で想いを寄せてしまったボムサネ。本当に切ないんですよ……
上のベストケミ賞のところでアンシムドクとの関係性はしっかり書いたので割愛しますが、この日の昼夜公演、♪完璧な結末の最後、サネがシムドクに別れを告げる「안녕」の台詞の違いが本当に素晴らしかったと思うのでそれについて書きます。

全く同じ場面・全く同じ台詞で、昼はぞわっと鳥肌が立つような気味悪さ、夜は実らない恋の切なさを感じるなんて、そんなことあります???
こういうのが好きすぎるので同じ作品を回すのやめられないんですよね。
この「안녕」と言って部屋を去る、というのを、ボムサネは♪死の秘密 でも繰り返します(言わない日もある。溜息つくだけとか鼻で笑って首傾げるとか)。この別れの挨拶が持つ意味が回によってがらっと色を変えるんです。
言葉ひとつの中に込められた意味の多さに眩暈がします。絶妙なニュアンスの違いが作品の解釈を根幹から揺るがす面白さ。

私はこの作品のこういうところが大好きです。

 

3位

●2019.07.31(水) 20:00 @대학로TOM1관
死の賛美(사의찬미)
キムウジン:정문성
ユンシムドク:안유진
サネ:김재범

 ●2019.08.28(水) 20:00 @대학로TOM1관
死の賛美(사의찬미)
キムウジン:정문성
ユンシムドク:최수진
サネ:김재범

 

またも2回分まとめてですが……過去のブログやベストケミ賞でさんざん話したのでもうここには余計なことは書きません(笑)
ムンボム友情路線誕生の瞬間&友情ペアマッコンの両方を観られたことは本当に幸運でした。2回とも本来の予定を捻じ曲げて強行した渡韓だったので、多少無理してもこういう体験ができてしまうってめちゃくちゃ危険だな……と思ったり。味をしめてしまう。
でもなぜ3位なのかというと、どちらも甲乙つけがたいゆえ、7/31のほうがよかった部分と、8/28のほうがよかった部分がそれぞれあるからです。
だからこの回!ってのが決められなくて、1位にできませんでした。エモさでいったら圧倒的に1位なんですけども……!!くっ悩ましい!!!

 

2位

●2019.11.10(日) 18:00 @yes24stage1관
랭보(ランボー)
ランボー:정동화
ヴェルレーヌ:김재범
ドゥラエ:백기범

正直に言うと、あのさちゃんの後、ランボーにちゃんとハマれるとは思ってませんでした。
事実、最初の何回かはそこまで刺さらなかったんですよ。やっぱり曲が素晴らしいな~!再演のアレンジ良いな~!というくらいで。

そう、🌸🐯(ドンファランボー/ジェボムヴェルレーヌ)ペアチョッコンまでは。

ほぼジェボムさん固定で通っていたわけですが、ヒョンフンランボー、ソホランボーとの回を見ながら、たぶんこれはドンファランボーとのペアで見たらどっぷりハマれるな、という予感はなんとなくありました。
そしてその予感がばっちり的中したときの感動たるや!
(ほんと、なんであんな遅くまでこのペアなかったんでしょうね。9月上旬開幕でペアチョッコン10/5ですよ。そのあとも1か月くらい🌸🐯なかった期間ありましたし。キャスケの偏りめ……)

話が逸れました。
そのペアチョッコンの10/5昼も十分素晴らしかったんですが、やはり芝居功者のお二人なので、回を増すごとにどんどん息が合っていきました。やはり、ぶつけ合う感情の濃さがどんどん深まっていくのは大学路の醍醐味ですね。

ドンファランボーは、再演3ランボーの中で一番強く"ヴェルレーヌ自身を"愛してくれるランボーでした。
劇中のランボーの台詞で「俺達が一緒にいたら不幸になるのなんてわかってる。だから何?」というのがあるのですが、キャストによってニュアンスが全然違います。
たとえば、ソホランボーだとこの台詞でかなり強めにヴェルレーヌを突き放すんですよね。「どうして俺について来れないの?」という苛つきが見えて、彼ら二人の間にある違いが強く感じられるニュアンスでした。ソホランボーはどこまでも純粋な詩人で、ヴェルレーヌにとっては厳しすぎるくらいの先導者であり神様だったので。
ところがドンファランボーの場合は、この台詞と共にヴェルレーヌの頬を撫でたり、抱き締めたり、自分の胸に手を当てさせたりして、自分のいる世界にヴェルレーヌを繋ぎ止めようと必死なんです。10月の時点ではソホランボーやヒョンフンランボーと同じように、苛立ちを顕にするようなニュアンスも感じられましたが、11月以降は苛つきよりも切実さのほうがずっと濃くなっていました。

同シーンの最後の台詞「したいようにしろ。俺は歩き続ける」も、ドンファランボーなりにヴェルレーヌの意思を尊重した結果なのだと思っていて。ヴェルレーヌ自身の意思で一緒について来てくれるのを待ってたんじゃないかなって思うんです。
失望して突き放せたらもっと楽なはずなのに、愛しているから諦められない。そういうヴェルレーヌ自身への想いというのが特別強く見えるのがドンファランボーの大好きなところでした。

対するジェボムヴェルレーヌ(長いのでボムポールと略します)は、ランボーと同じ世界が見えるからこそ、その世界が世間には認められないことも、抗い難い現実があることも知っている。ランボーの未来が明るくはないだろうことは痛いほどわかっているから、その手を取れなかった。
もう一度地獄へ身を投じるだけの勇気がなかったんですね、ボムポールは。けれどそのことをずっと後悔して、ランボーと決別したあとも泣きながらアブサンに溺れたりしていくわけです。
こんなんじゃダメだとわかっていても恐怖から逃れられない、どうしようもなく弱い人間で、だけど詩だけは持っていた。ランボーに出会い、愛されれば愛されるほどその重みが負担となっていく。
「君と一緒にいる時間は毎晩飲む毒酒のようなものだ。しばし現実を忘れさせてくれる幻覚、夢、狂気!」という台詞がボムポールをよく表していると思います。その夢にただ溺れ続けていられたらよかったのに、家族や文壇や世間の雑音がそうはさせてくれなかった。若く、家族とも不縁で、まだ背負うものを持たないランボーとはあまりにも背負うものの数が違いすぎた。史実のヴェルレーヌ像とはちょっと離れてますけれど、すごく感情移入できるし庇護欲をかきたてられる役作りでした。可哀想な可愛い人……

この作品は中盤以降、ひたすらランボーヴェルレーヌがすれ違いぶつかるシーンが続きます。
お互いがお互いの詩を尊敬していて、お互いをこのうえなく愛していたのに、最後まで共に歩むことができなかった二人。
ドンファランボーにとっては、「たとえ自分の詩がまだ世間の誰にも理解されなかったとしても、ヴェルレーヌだけは必ず理解してくれる」という思いが一つの支えだったんだと思うんです。
「私は君みたいに未知の世界へ向かっていけるような人間じゃない」と言うヴェルレーヌに対し、「だけどあなたは俺を理解したじゃない。それだけで十分に特別だ」と答えたときの、あなたと詩を通して繋がれたことが心から幸せだ、と訴えかける切実なまなざし。
ドンファさんの愛の注ぎ方って濃度がえげつないじゃないですか。眩しくて受け止めきれなくなるヴェルレーヌの気持ちめっっっちゃわかる。
なぜあの決別に至ってしまったのか、詩人同志としての関係性と恋人としての関係性が複雑に絡み合って、色々な視点から彼らの関係のことを考えられるのがこのペアの大好きなところでした。

ペアの話の詳細はこのへんにして。
この二人のペアでは計5回見たのですが、迷わず断言できるくらいに11/10(日)の夜公演が最高でした。

11/8(金)夜、11/10(日)昼公演も同じペアだったのですが、その2回は私が大好きな上記路線とはまた違っていたんですよ!
ランボーヴェルレーヌを人としても詩人としても愛していたのに、ヴェルレーヌは最終的にランボーの詩人としての才能しか見えなくなっていた、そんな路線でした。あまりにも🌸ランボーが可哀想でつらかった……この路線も今思い返せばすごかったですが。
1ヶ月ぶりに見た🌸🐯がそんな路線だったので、まさかもうペア初日に見たあの切ないロマンス路線には会えないのでは!?と思っていたところで、運命の11/10(日)夜公演がやってきたわけです。

あまりにも素晴らしすぎて、泣きすぎて酸欠になりながら雨の中ホテルへ戻ったのをよく覚えています。むしろ感動したことしかよく覚えていないので公演中の細かい記憶がだいぶ飛んでしまっているのが悔しい……

傲慢ラッパ以降があまりにも辛くて苦しくて切なくて、彼ら二人がぶつかり合うたびにぼろぼろ涙が出てきて止まりませんでした。最後のちょろくりぷで、「짧은 입맞춤에 수줍게 묽든 내 얼굴을 그대 여린 가슴에 살며시 웅크리게 해주오」の部分をヴェルレーヌの声で想像しながら胸に詩集を抱いていた🌸ランボーが、その詩を通してポールの姿を思い浮かべ、ポール、ポール!と呼びかけながら近寄っていく姿を見て、顔面をぐっしゃぐしゃにしながら号泣。
死を目の前にしてなお詩を通してポールを想っていたランボーランボーが遺した詩によって救われたヴェルレーヌ。決して晴れやかなハッピーエンドではないですが、とても切なく美しい結末でした。
こ~~~いうのが大好きなんだなあ!!!!!(大の字)

この日以降も3公演この作品を見ましたが、結局この公演を超える回には出会いませんでした。
こういう奇跡みたいな回って、その回が素晴らしかったのはもちろんとして、その記憶と感動を大事に大事に抱えるおかげで思い出補正もかなり強力にかかるので、なかなかその後同じ作品でそれを超えるものに出会えなくなってしまうのは少し欠点ですよね。
それでもその後の回が面白くなかったというわけでは決してないです。🌸🐯以外のペアも含めてマッコン週もすごく楽しく観ましたし、それぞれの回ごとにとても好きなニュアンスやディテールもたくさんありました。

やはり好きになった作品をたくさん観るのが私は一番楽しいみたいです。
食べ物も好きなものばっかり食べ続けるし、そういう性分なんでしょうね。
次はどんな作品に通いまくることになるやら……今はもうそんな状況じゃないので、早く飛べるようになって、次の沼に出会いたいです。切実……

 

1位

●2019.08.18(日) 16:00 @浅草九劇
SMOKE
超:日野真一郎
海:大山真志
紅:池田有希子

「いや韓国の公演じゃないじゃん!!!」というツッコミは無視します。韓国ミュージカルだし!なによりこれはあこグリンアワードだから!!!

浅草SMOKE、初演の千秋楽がほんっとに素晴らしかったんですよ。
公演も最高で、最後の舞台挨拶の最後に「君は時折、君が一番嫌いな食べ物を貪り食う!」とW紅が声を揃えて。そこからキャスト5人による♪翼 でグランドフィナーレ、という。客席みんなぼろっぼろに泣いてて、終演後トイレ列に並んでるときも周りがみんな泣いているので嗚咽の大合唱みたいになってたのを今でも覚えています。2位のランボーのところでも書きましたが、そういう奇跡みたいな回ってなかなか塗り替えられないんですよね。

ところが、再演浅草SMOKEは違いました。
正直作品の完成度というところで言えば、公演序盤の時点ですでに初演千秋楽を超えていたように思います。
続投キャストだからというのはもちろんですが、超・海の二役を演じる大山さんと日野さんの深まり具合がダントツで凄かった。
このお二人が出演していると、超の向こうに海が、海の向こうに超が、自然と見えてくるんです。役作りが似ているわけでもないのに、なぜかお互いの影が見えるんですよね。
両方の視点から作品を掘り下げていっているからこそ、超と海がどこでどう繋がっている存在なのか、という部分がとてもよくわかっていたんだと思います。

終演後、延々とポエムを垂れ流していたときの記録。
マッコンということでご自由にどうぞ、と飴ちゃんが置いてあったの、あれ大学路リスペクトですよねえ。アトラスさんの韓ミュ愛を感じた瞬間でした。次はマニアカード制度も是非取り入れていただきたく。

話を戻します。
このお二人、見た目といい声といい雰囲気といい、まったく欠片も似てないじゃないですか。(※私は元おおやまさんファンです)(※今も好きですよ!!!)
普通に見ていたら鏡合わせの存在になんてなりようもないくらい違う二人なのに、その彼らがぴったりと「同じ」である、と感じる瞬間が確かにあったんです。

この千秋楽の日、全体を通してすばらしい熱量だったのですが、一番奇跡を感じたのは「私はひそかに鏡のある部屋に入る」の声の重なりでした。
海が超と自分の関係を理解し、鏡合わせの存在をはっきりと認識し、その姿に自分の姿をはっきりと認めた瞬間。そういう、台詞や歌詞を超えたところにある表現を確かに受け取った感覚、第四の壁を超えてこちら側に飛び込んでくる演劇表現の力というのを直に肌で感じたこと。あの瞬間の身震いは今でも忘れられません。
こういう演劇的な感覚を、あの濃密な空間で共有できるというのはすごく奇跡的なことだと思っていて。多少スピリチュアルな表現かもしれないですけれど、私にとってはエンタメが宗教みたいなものなので、間違いでもないのかなと。

この作品を生み出したクリエイターの皆さんや大学路という街にも、日本公演を企画してくださったアトラスさんにも、難しい題材を全力でやりきってくださった演者のみなさんにも。本当に感謝しています。
今月中にはDVDが届きそうですし、秋には韓国でも再演が予定されています(大学路の「上演予定」は実際に幕が上がるまで信じちゃダメですが)。
韓国でも、できれば本陣様……ジェボムさんの超で、この作品が見られることを願って。
夏が終わるまでにはコロナ殲滅されてますように!!!!!

 

 

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以上、思った以上に長々と書いてしまってようやく書き終えた自己満アワードでしたが、今年まさかこんな状況で新しい作品との出会いが強制的に絶たれてしまうなんて思ってもみませんでした。
アートも、ブカマも、ミッドナイトも、リジーも、デミアンも、アンチェインも、何もかも見れず……夏の作品として今公開されているロビンとバスケ団はなんとか見られることを信じてますが、考えれば考えるほど悲しくなりますね。
7月に台湾でランボー韓国カンパニーの公演が予定されていたのですが、こちらもどうなるかわからないですし。🌸🐯ペアが行くなら私も台湾行こうと思ってたんだけどなあ……

気が滅入る日々ですが、手元にあるDVDやプレスコ・カテコ動画を見ながら、また気軽に飛べるようになる日を待とうと思います。

 

はー渡韓したい!!!